もしかすると備前焼!?土でできた信楽焼と石でできた有田焼の違い!
信楽焼と有田焼の大きな違いからざっくりと学ぶ!土の陶器と石の磁器について!! 焼物が好きで様々な地方を巡っていると、「この話はどこかでも聞いたな」と思わせる出来事に遭遇することがあります。 その一例が有田焼と信楽焼きでした。しがらきやきと読みます。
有田焼と信楽焼の違いについて
有田焼と信楽焼きの違いは何かというと、有田焼は陶石を原材料にした磁器で、信楽焼きは粘土を原材料にした陶器ですから、製作的な、あるいは技術的な共通点はありません。 では、どこに共通点があるかというと、置かれた環境に似通ったものがあったのです。
有田焼のルーツにさかのぼってみる
伊万里・有田は日本で初め誕生した磁器として有名です。 鍋島藩はそれまで同じように有田焼を焼いていた鍋島窯をお抱えの窯とし、その技術を門外不出のものとしました。 鍋島焼は高級な磁器、それ以外の有田焼は日常の食器という二分化が進んだまま、技術は代々伝承され、今日へと受け継がれています。 伊万里・有田の卓出したところは、伝統におもねることなく、新しい創造に取り組む窯元や作家が次々と現れ、切磋琢磨し、競い合う素地ができていたことです。 現代でもそれを象徴する出来事があります。 400年の伝統を継承する有田焼の香蘭社などが率先して、有田焼の万年筆を開発し大反響を巻き起こしました。
「土」でできた信楽焼とは
一方、信楽焼きは滋賀県と三重県の県境にある高原地帯の甲賀市信楽町に位置し、火色、ビードロ、焦げと呼ばれる自然釉の美しさと粗く素朴な土味が特徴の焼物です。 耐熱性に優れていたことから、大型で頑丈な陶器に用いられ、当初は火鉢の生産で全国に知れ渡っていました。土が材料という意味では、備前焼に近いものかもしれません。 信楽は伊万里・有田と同じように、江戸期から窯焼きの技術を他の藩に知られないように極秘とし、他の地域から信楽の窯元へ働きに来ていた者には大切な技術に携わることはさせず、雑役のようなことをさせていたそうです。 また、陶工が信楽を出て焼物を作ることも禁じ、技術を漏洩すると厳罰に処せられたそうです。 ただ、信楽焼きの場合、有田焼のように伝統工芸的な作品づくりに力を注がれなかったため、今日でも生活雑器の生産が主体となっています。 ところ変われば、焼物も変わってくるものですね。
信楽焼と言えば狸の置物!
愛らしいたぬきの置物で有名な信楽焼は、有田焼をはじめとする日本の焼き物としても大変有名です。 しかも、信楽焼は「日本六古窯」といわれる、日本古来の伝統的な焼き物のひとつとしても注目されています。 信楽焼は、滋賀県の最南部の位置する甲賀市信楽町を代表する産業で、特に「他を抜く」との意味から「たぬきの置物」は商売繁盛のお守りとしても人気です。 現在の信楽では、食器・植木鉢等の日常の焼き物を始め、建築用タイル・陶板、狸等の置物、傘立て、花器、茶器、庭園用インテリアの焼き物等多くの商品が生産され私達の生活に根ざした焼き物が生産され、変化の激しい需要に対応する技術の開発が進められています。
信楽焼の有名な作家・窯元
こちらの章では信楽焼の有名な作家や窯元を紹介します。
岡田陶工房/岡田勲
伝統のある信楽焼に色鮮やかな釉薬を使った色とりどりで独創的な器を作陶しています。工房を開いた岡田勲は大学を卒業後に伝統工芸の専門学校で陶芸の基礎を学び、信楽焼メーカーで経験を積み2017年に陶芸作家として独立しました。日用雑器を中心に作品を作っていますが、パズルのピースをイメージした箸置きやネジなどを使用して作る模様の皿など、ひとつのスタイルに囚われることのない斬新な作品が特徴となっています。人気のシリーズである「気まま」では、石膏で作った型ではなく海岸で拾った自然の石を型に使用しているため焼き上がった作品はいびつが生じますが、それが魅力と評判です。信条は「土を捨てないこと」で、土は一度焼いてしまうと元の土に戻るまでに何千年・何万年という時間が必要になるため、全て使い切って新しい作品に生まれ変わらせるなど、常に無駄にしないように心がけています。
乙鷲堂/藤原 孝親
日本の枠に留まらずにフランスなど海外の展示館へ参加するなど、新しい信楽焼作家として注目されています。藤原孝親は信楽に生まれ、信楽高校セラミック科を卒業してから信楽窯業試験場で学ぶなど生粋の信楽人で、スタイリッシュでモダンなデザインの作品が特徴です。タンブラーやマグカップなど日用雑器が中心に作陶しており、黒や赤など色鮮やかな釉薬を使用した作品は日常使いはもちろんのことプレゼントなどでも高い人気を誇ります。信楽狸の作り手としても知られていますが、従来のイメージを払拭するユニークで斬新なデザインの狸は、毎年開催されている信楽セラミック・アート・マーケットでも強烈なオーラを放ち注目を集めています。
yurutari/山田 晃一郎
モダンながらも信楽焼きの特徴でもある土感を残している仕上がりの器が特徴です。日々の落ち着きとくつろぎ、満足を目指して、料理を乗せたときに最も映えるような日々の食卓のための器を中心に「Yシリーズ」と「Wシリーズ」という2種類の作品を展開しています。Yシリーズは「シンプルであたたかい」ことをコンセプトとしており、食卓のシーンを考えたデザインが特徴です。乗せたり入れたりするだけでも納まりよく使えることが魅力で、ナチュラルな陶器の持つ柔らかさや暖かみを直接感じることができる深皿や四角鉢、デミタスカップなどが作品ラインナップとなっています。一方のWシリーズは「素朴で味わい深く、静かでおいしい」がコンセプトで、土の風合いをしっかり活かしたその存在感で食卓を彩ります。しかし料理が主役になるような気配りもあり、不必要に装飾的にならないように計算されて作られたラインナップは、シンプルなお椀やテールプレート、マグカップなど豊富に取り揃えてあります。信楽陶芸の森で開催されるアートマーケットや、不定期ではありますがギャラリーでの個展なども開催するなど活発な活動でも注目を集めています。