其泉窯の読み方とは?知っているようで知らない、有田焼の老舗「賞美堂」ってどんなところ?
「えっ、これが有田焼?もっと鮮やかな色の絵が全面に描かれている焼き物じゃないの?」
はじめに目に飛び込んできた画像を見て、そのように感じたかもしれません。「其泉窯」や「有田焼」と題した記事をクリックしたのに思ったのと違うぞ、と。
今一度小皿をじっくり眺めてみてください。
まずは純白で滑らかな磁肌。この濁りのない白さは、原料である単味の陶石(とうせき)に由来します。
有田焼の場合、この硬く白い石を細かく砕いた粘土で素地を作ります。
次に、レモンに絡まった蔦のデザインを見てください。一見モダンなデザインのようですが、実は「唐草文様」と呼ばれる伝統的な吉祥文様に法っています。この文様は、蔦草がたくましく方々に繁茂していく様子から「長寿・繁栄・発展・永続」を象徴します。静止している図でありながら時間軸を意識する文様は、まさにいきているようで面白いですね。
このように、有田焼・其泉窯(きせんがま)は伝統的な意匠に基づきながら、新しさ・親しみやすさが共存している磁器です。本記事ではその魅力について迫っていきます。
▶ 其泉窯とは何?
さて、賞美堂が其泉ブランドにたどり着くまでの変遷を、有田焼の歩んできた道とともに振り返ってみましょう。
其泉(きせん)は、日本の磁器発祥の地―有田に本店を構える賞美堂がプロデュースした、オリジナルブランドです。
▶ 其泉を生み出した賞美堂とは?
賞美堂は有田焼を専門に扱った商社です。「時代をこえて美しく」をコンセプトに、有田400年の伝統を重んじつつ、今の時代になじむ器を取り揃えています。
賞美堂は設立以来、有田焼の華やかな色絵、日常的に使いたくなる形状にこだわった器を意識して、古伊万里のデザインを研究してきました。その格式高さを維持しながら製造技術を改良することで、より手に取りやすい価格の製品を生み出すことに成功しました。つまり、大量生産できるようになったのです。
▶ 有田焼のこれまで
国の伝統工芸品にも指定されている有田焼。
みなさんはどのような印象を持ちますか?
元々有田焼は佐賀藩主が使う食器として、あるいは将軍や諸大名へ献上された焼き物でした。17世紀半ばには欧州へ輸出され、王侯貴族たちから「IMARI」と呼ばれ愛されました。このことから「有田焼=高級品」といったイメージが定着したのかもしれません。また江戸時代においては技術の流出を防ぐために陶工は藩から囲われ、有田焼の製法はいわゆる秘伝の技でした。
余談ですが、伊万里港から輸出された肥前磁器全般を伊万里焼と呼ぶことがあります。つまり有田焼は伊万里焼の一部ということです。長崎の佐世保や波佐見で作られた焼き物も伊万里焼と呼ばれます。有田町周辺で焼かれた磁器が「有田焼」と呼ばれるようになったのは明治に入ってからのようです。
これまでの有田焼は、高品質・デザインの豊富さが評価され、それ相応の高価格で流通しました。特に市場の需要に合わせて「古伊万里様式」「柿右衛門様式」「鍋島藩窯様式」などの装飾技法が生み出されました。一口に有田焼といっても青一色で描かれた染付から赤・黄・緑・金などの色がふんだんに使われた絢爛な絵付けまであるのには、こういった背景がありました。
その一方で移りゆく時代の流れには抗えず、有田は次第に販売不振に陥っていきます。生活様式の変化への対応と他産地商品との競争に苦しみ、打開策が求められました。このまま美術品となりゆくか、「工芸品」という名の通り実用的要素を含めたまま人々の生活の中に残っていくのか。有田焼を作り支える当事者にとっては死活問題でした。
▶ 賞美堂による其泉ブランドの確立
賞美堂が着目したのは製造工程の改良でした。具体的には、器に模様を描く「絵付け」の工程を、手描きではなく「転写技術」を取り入れました。
手描きで絵付けをする技術は非常に高度かつ、時間がかかります。時間がかかるということは、描いている最中に不純物が入り込むリスクが高まるということでもあります。作業中に舞っている鉄の粉が付着すれば不良品とされてしまうのです。転写紙を利用して器に模様を付ける技術を有田焼に導入することで、これまでの「多品種・少量生産」であった有田焼は「多品種・大量生産」が可能になりました。
江戸時代とほぼ同じ技術で有田焼を制作している工場は、数カ所しか残っていません。時代が進むにつれて使う道具や機械が変わっていったとしても、作り方の技の根底にある伝統はうまく受け継がれています。
▶ まとめ
400年の歴史ある有田焼を、芸術品としてだけではなく現代の生活に寄り添うよう変化させながら人々に届けてきた賞美堂・其泉ブランド。
「伝統工芸品・有田」は多少遠くに感じてしまうとしても、其泉はあなたの生活にするりと溶け込んでしまうかもしれません。
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賞美堂の住所と電話番号
なお老舗賞美堂本店は多店舗展開をしていますので、「帝国ホテル」をはじめ、「中の原本店」や「賞美堂本店 アリタセラ店」など、複数の場所で買い求めることが可能です。また、オンラインショップにも対応しており、遠方にお住まいの人でも気軽に覗いてみることができるでしょう。いずれの場所でも豊富なラインナップで迎えてくれますので、希望にマッチする一品が見付かるはずです。なお、店舗の詳しい所在地や電話番号は次の通りです。
賞美堂本店 中の原本店
〒844-0009
佐賀県西松浦郡有田町中の原1丁目1番13号
TEL:0955-42-2261
FAX:0955-42-2180
営業時間:10:00~17:00
定休日:元旦・水曜日
賞美堂本店 アリタセラ店
〒844-0024
佐賀県西松浦郡有田町赤坂卸団地
TEL:0955-42-2261
FAX:0955-42-2180
営業時間:8:30~17:30(平日)
10:00~17:00(土・日・祝日)
年中無休(元旦休み)
賞美堂本店 東京店の住所
賞美堂本店 東京店
〒100-0011
東京都千代田区内幸町1丁目1番1号
帝国ホテル本館 地下1階
TEL:03-3592-6455
FAX:03-3592-1346
営業時間:10:00~19:00(平日)
10:00~17:00(日・祝日)
年中無休